5年ほど前にインドを旅したとき、乗り合いバスを利用してラダック地方へ向かいました。これが私にとって人生最高の旅となりました。

ラダックはインド北端の山岳地帯にあるチベット文化圏の土地です。その中心都市であるレーは標高が3,500mもあり、周囲はインドヒマラヤと呼ばれる4,000m超の高山に囲まれています。外界から隔絶された、まさに秘境と呼ぶに相応しい一帯です。

このラダックにバスでアクセスするためには、マナーリーから20時間ほど走り続けたうえ、標高5,000mの山を3つも越えていかなければなりません。高山病にかかる恐れがあるため、ちょっとした命がけのドライブと言えそうです。おまけに道中の路面がやたらと凸凹している酷道でもあります。車体が絶えず揺れるため、決して快適なドライブにはならないでしょう。ラダックへのバス移動は、どんなに旅慣れている人でも尻込みしてしまうような厳しさがあるのです。

しかし、私はあえてバスを使ってラダック入りすることにこだわりました。なぜなら、道中の車窓の風景が格別に素晴らしいと聞いていたからです。ラダックにはバスを使わず空路でアクセスすることもできます。飛行機なら山の上を飛び越え1時間足らずでラダック入りできるのですから楽なものです。しかし、バスでなければ経験できない風景があるというのなら、飛行機を使って楽をするわけにはいきません。だから私は不安を振りほどいて、バスでもってラダックへ向かうことにしました。

そしてその選択は大正解でした。マナーリーからラダックへと至る旅路には、私の予想をはるかに超える絶景が横たわっていたのです。空の青はどこまでも澄んでいていて、その下にはインドヒマラヤの高山が脈々と連なっていました。この風景を飛行機で飛び越えてしまわなくて本当に良かったと思ったものです。

この旅から5年近い月日が過ぎましたが、今でもラダックへのバス移動のことは懐かしく思い出します。私の旅歴のなかでもハイライトと言えるような素晴らしい旅でした。

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